NAB就業教育研究所

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所長'sファインダー

「飯を食える大人」を育て、支えることに拘る、
赤坂にあるNAB就業教育研究所所長、佐々木直人のあれこれブログ。

プロフィール

佐々木直人

1973年生。
1998年三菱商事株式会社入社。ベンチャー企業の起ち上げから中央官庁まで、国・業界を問わず様々な新規事業を担当。中途採用のスキームを提案し面接官として合否判定や育成施策の企画にも携わる。 情報戦略統括部、経営企画部を経て独立し、2011年NAB就業教育研究所を設立。 学生や若手社会人のスキル向上、キャリア形成に正面から向き合い続けている。

その提案書が刺さらない理由

カテゴリー:ビジネススキル



最近、提案書をいただく機会が本当に増えた。

ここ数年、ほぼ提案する側だったので、オフィスレイアウトから金融、IoT、医療に至るまで、これだけいろんな事業の提案書を短期間で密に見るのは随分久しぶりだ。

見ていて気づいた。枚数が多く、メッセージがぼやけていて、ストーリーが散漫で、営業マンのプレゼンテーションそのものまでグダグダなものが、本当に多い。

見事までに刺さらない。最近では10枚を超える資料は捲る気力も出ない。何でこんなことになるのだろう。

実際に、いろんな企業で企画書を作る仕事をする人たちの話を聞いてみた。共通していたのは、“社内でなんとなく「正しい」とみなされているやり方でプレゼン資料を作る”ことそれ自体を、非常に大事にしているようだ。

ここで言う「正しい」とは、今まで自社の中で踏襲されてきたやり方を同じように実行することである。
だから、いきなりPowerPointでスライドを作るところから始まる。以前先輩が使った、前の担当者が受注できた、といったファイルを引っ張り出し、ファイル名を変えて保存し、客先の名前や特徴的な単語を置き換え、同じような資料を差し替え、他の人から集めた資料をちょい足しし、質問されて困ることがないようたっぷり事例や記事の引用をちりばめる。

プレゼンする際には、ノート部分にセリフが全て書かれているので、とりあえず客の前でそれをしゃべれば恰好がつく。

だがしかし、そこには目の前の客が今ホントに聴きたい内容は、これっぽっちも入っていない。中には、トラックのリースの話が聞きたくて呼んだのに、冒頭「うちはトラックはやってないんですが…」と切り出し、延々自動車リースの歴史や実績を語って帰った会社もあった。

いったい、何をしに来たのか…。

それでも、せっかく足を運んでもらったので、他の解決策やアイディアが無いかディスカッションを試みても、プレゼン資料の内容を超える話はめったに出てこない。ここまでひどくはなくても、そろそろ「刺さるかな、刺さらないかな?」といった雑な仕事の仕方はやめた方がいい。生産性は下がるは、貴重な働ける時間は浪費するわ、聴かされる方にも時間を無駄にするわで、誰も得しない。

つい最近、ある先輩商社パーソンから聴いた言葉を思い出す。

「刺さるかどうか? そりゃ刺さるよ、だって刺しに行ってんだから。

僕自身は、最初にお客さんにもっていく提案書は2ページあれば充分だと思っている。

1枚目は、“目指すべき姿”について。お客さんがどんな状態になるのか、映像が頭に浮かぶようシンプルに描く。

2枚目は、現状と課題。今、目の前のお客さんが何に困っているのか。

ただ、それだけを書く。世間の動向や取り組み事例、実績などは一切なし。

要は、お客さんが誰と仕事をしたいのか、という1点だけを突破したくて描く。

「この人たちだけは、自分たちのことをわかってくれている。」という共感と納得感。

最初の提案書に必要なのはそれだけ。